私たちについて

バラスト水と外来種問題

貿易や投資活動の世界規模での自由化が進展する中で、物流もグローバル化が進行しています。そうした世界情勢の中で、船舶は、大量の物資を輸送する手段のひとつとして大きな役割を果たしています。

こうした国際物流の主役である船舶は、航行中に船体が浮かび上がるのを防いだりバランスをとるための「おもり」を積んでいます。これを”バラスト”と呼び、特殊な船舶を除き、一般的には積み下ろしのしやすさ・コストの面から、水(海水や河川水)が使用されています。つまり、荷揚げした港では、バラストタンク内に水を汲みいれることで、軽くなった船体を安定させ、荷積みする港では、排水することで、バランスを保ちます。

船内にバラスト水を取り入れる際、こし網によって異物や魚介類、クラゲ等の混入は防がれていますが、より小さい、海藻の断片やプランクトン、魚類等の幼生や卵などは、バラスト水に含まれてしまいます。

国際海事機関(IMO)によると、数千種の生物がバラスト水に含まれて本来行くはずのない海域に移動していると言われています。バラストタンクに入り込んだ水生生物の多くは輸送中に死滅しますが、一部の生き残った生物は、到着港でバラスト水とともに排出されてしまいます。そうした生物が、国や地域を越えて異なる生息域へ移動した結果、「外来種」となって生態系に悪影響を及ぼす事例が報告されています。バラスト水問題は、今や地球規模の海洋環境問題となっています。

バラスト水を介した水生生物等の移動

[出発港]貨物を積み下ろし、バラスト水を取り入れる [到着港]貨物を積み込み、バラスト水を排出する[出発港]貨物を積み下ろし、バラスト水を取り入れる [到着港]貨物を積み込み、バラスト水を排出する

バラスト水を介した水生生物等の移動による影響

1980年代から、バラスト水に混入して移動した外来種生物の増殖が起因したと考えられる沿岸域海洋生態系の諸問題が、数多く報告されました。例えば、1988年には、欧州原産のゼブラ貝が北米の五大湖周辺で異常繁殖し、発電所の取水口を詰まらせたことで発電所が停止した事例も、バラスト水が原因とされています。バラスト水によって持ち込まれた水生生物に起因する環境・経済被害は、それ以外にも数多く報告されており、世界規模で問題視されています。

顕著な環境影響が世界規模で発生顕著な環境影響が世界規模で発生

出典:国際海事機関(IMO)

バラスト水管理条約

国際海事機構(IMO)は、こうしたバラスト水による生態系の崩壊を防ぐべく、2004年に総トン数400トン以上の全船舶にバラスト水処理設備の搭載を義務化する「船舶のバラスト水及び沈殿物の規制及び管理のための国際条約」(バラスト水管理条約)を採択しました。2016年9月8日、フィンランドの批准をもって、ようやく同条約の発行条件「批准国30カ国以上かる商船船腹量合計35%以上」が達成され、12ヶ月後の2017年9月8日に発効しました。発効後は、同条約に則り、主管庁の型式承認を取得したバラスト水処理装置による排水、あるいは、バラスト水交換といった、バラスト水の適切な管理が求められています。

JFE BallastAce®は、以下の手続きを経て、IMOの承認を取得したバラスト水処理装置として、商品化されました。

  1. IMOが定めるG9ガイドラインに基づき、活性物質(殺菌剤)が用いられる際の環境・人体・船舶等への影響について、各種試験を実施。液体殺菌剤方式は2010年3月、顆粒殺菌剤方式は2012年10月に、IMOの最終承認を取得。
  2. IMOが定めるG8ガイドラインに基づき、所定の性能試験(陸上試験、船上試験、環境試験)を実施。液体殺菌剤方式は2010年5月に、主管庁(日本政府)より型式承認(施行前試験合格書)を取得し、同型式に追加される形で、顆粒殺菌剤方式は2013年6月に取得。

G8ガイドライン、G9ガイドラインの詳細はこちら

米国バラスト水管理規則

IMOのバラスト水管理条約の一方で、米国では、米国沿岸警備隊(USCG)による独自のバラスト水排出基準を設けています。
米国水域内でバラスト水を排出する船舶は、USCGが定める試験方法・基準に基づいて承認されたバラスト水処理装置を搭載する必要があります。しかしながら、規制が施行された2012年当初、USCGの型式承認を取得したバラスト水処理装置が存在しなかったことから、IMOにより承認されたバラスト水処理装置を一時的に、代替管理システム(Alternate Management System: AMS)として認める措置がとられました。AMSを搭載した船舶は、法令適用日から最長5年間のAMS有効期間中の使用は認められていますが、期間内にUSCG型式承認取得した装置の搭載が義務付けられています。

JFE BallastAce®は2018年11月にUSCG型式承認を取得しました。

認可・証書

JFEエンジニアリングでは、船舶が米国を含む世界中を制限なく自由に航行することをサポートするため、以下の認定を受けています。

  • 国土交通省 相当指定書(型式認証)国土交通省 相当指定書
    (型式認証)
  • 日本海事協会 型式証書日本海事協会
    型式証書
  • リベリア政府 型式証書リベリア政府
    型式証書
  • キプロス政府 型式証書キプロス政府
    型式証書
  • USCG(AMS)承認USCG(AMS)
    承認
  • USCG型式証明USCG型式
    証書

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